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タウンニュースARTICLE 一面記事

2019年12月5日号

ときめきは青春そのもの

 

▲「学校に向かう瞬間から、気持ちは一気に青春時代に戻る。鏡を見ると、がっかりしちゃうんだけどね」と笑う大橋さん

4月に定時制高校に入学した 大橋光廣みつひろさん(常陸太田市)

 常陸太田市の大橋光廣さん(71)は今年4月、県立太田一高の定時制普通科に入学した。
 平日は午後5時少し前に家を出て、教科書やノートを入れたリュックを背負って学校へ。上靴にはきかえ、校舎2階の1年生の教室に入る。
 定時制は、給食の時間から始まる。「この時間が一番楽しみ。みんなで食べるから、よりおいしくて」。年下の3人のクラスメートと担任の教諭とで机を囲む。
            ■
 念願の高校での学校生活だ。56年前の中学3年の春、同校の全日制を受験したが、不合格。大橋さんは3人きょうだいの次男。家計は厳しく、進学はあきらめた。
 機械関係に興味があり、自動車の販売店で整備士の見習いとして働き始めた。「だれにも負けるもんかと、毎日必死でした」。50代では、難関の1級自動車整備士の資格も取得した。
 40年ほど続けてきた自動車整備の知識が少しでも役立てられたらと、62歳から2年間は、シニア海外ボランティアとして中南米のドミニカ共和国に渡り、現地の工業高校で教諭の助手を務めた。
 何気なく見ていた市の広報紙で、同高定時制の生徒募集記事が目に止まったのは、今年の始めのこと。眠っていたはずの気持ちが、一気にあふれてきた。「高校で学びたい。今しかないと思いました」
 作文と面接試験を突破した。
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 入学式には、東京で暮らす長女が参列してくれた。長女も次女も、同校全日制の卒業生。「お父さんは、私たちの後輩だね」と笑いながらも、喜んでくれた。
 授業では、一番前の席に座る。中学時代の苦手科目は数学と英語だったことが遠い記憶にあった。数学の時間、マイナス同士の掛け算はプラスになることを習い、「あの頃は、ここでつまづいたんだな」と気がついた。でも、そのつまづきを一つ一つ克服するたび、小さな自信がつく。「どの教科も、発見がいっぱいで面白い。この年齢だから、次の日には忘れてしまうんだけど、わかった瞬間は本当にうれしいんです」
 読書の楽しみも、高校に入って発見したことの一つ。以前は自動車などの専門書にしか興味がなかったという大橋さんだが、金曜に学校の図書室で本を借りて帰るのが習慣になり、池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズ全24巻をすでに読破、次の作品として三国志を読み始めた。3年前に亡くなった妻は、本を読むのが大好きだった。「本の話を、もっとしたかったなぁ」
 無事に卒業することが一番の目標。「あと3年。どんな未来が待っているのか、楽しみです」



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