文へスキップ

よみうりタウンニュース 毎週木曜日発行の読売の地域情報紙 発行/茨城北部読売会 制作/読売茨城タウンニュース社

TEL.029-221-6720

〒310-0805 茨城県水戸市中央2丁目7番37号
狩野ビル3階

タウンニュースARTICLE 一面記事

2019年12月19日号

次の舞台を目指すだけ

 

▲自宅近くの小学校で練習する石田さん

中止になった「ゆめ大会」の県代表選手 石田厚司さん(茨城町)

 茨城町前田の石田厚司さん(45)は、令和元年10月に本県などを襲った巨大台風で、目標だった大舞台に立つ機会を逸した。
 大舞台とは、本県を会場として開催されるはずだったが、悪天候で中止になった全国障害者スポーツ大会「いきいき茨城ゆめ大会2019」。ソフトボール投げの本県代表選手として出場するはずだった。
 昨年の福井大会に続いての出場になる予定だった。同大会では、同じ選手の連続出場は2回までという目安があるため、地元大会で有終の美を飾りたいという強い願いもあった。友人らが開いてくれた壮行会では、「最低でも3位に入賞してメダルを取る」と宣言した。
 中止の知らせは、開会式の前日、出場選手たちが集まるホテルへ向かう途中で受けた。「今思えば、中止で当たり前の台風だったが、あのときは信じられない思いだった」
           ◇
 左半身にまひがあり、左足には義足を付けている。約30年前のバイクでの交通事故が残した障害だ。
 当時通っていた高校は中退し、治療が済んだ後に、定時制高校を卒業。その後は、自動車関係の会社に勤務している。
 7年前のシッティングバレーボールとの出合いから、スポーツに目覚めた。シッティングバレーボールは、バレーボールをアレンジしたパラリンピックの正式種目。縁あって、日本代表の選手と交流を持ち、海外遠征にも同行した。
 「みんな、障害者かどうかを飛び越えた技術とパワーだ」と、心から憧れた。
 自分も本気で何かに打ち込んでみたいと思い始めた頃、全国障害者スポーツ大会のことを聞いた。ソフトボール投げという競技に出合い、すぐに夢中になった。子どもの頃、草野球で周囲を驚かせたという右肩は、自分で驚くほど力強く、躍動した。
           ◇
 全国障害者スポーツ大会の中止が決まった翌日は、開会式に出席する予定だった日。勤務先の休暇許可は得ていたが、通常通りに出勤した。事情を知る同僚たちは、「今日ぐらい休めばよかったのに」と言ってくれた。
 退勤後は、長年の習慣になっているスポーツジムでのトレーニングに向かい、翌日からも、同様の日々を重ねる。
 茨城大会は中止になったため、連続出場にはカウントされない見込みで、来年の鹿児島大会出場への可能性は残す。地元大会にかけた思いは取り返せないが、「悔やんでも仕方ないこと」と、さっぱりとした表情だ。
 30年前の事故以降、植え付けられた思いがある。
 「どんなときでも前向きであることは、自分を強くしてくれるし、私のそんな姿勢が、時折、人に勇気を届けることもできる」



バナースペース

株式会社読売茨城タウンニュース社

〒310-0805
茨城県水戸市中央2丁目7番37号
狩野ビル3階

TEL 029-221-6720(代表)
FAX 029-227-7888

よみうり

タウンニュース

Facebook いいね!