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巨大なはんてん!?
心も温まる伝統寝具
かいまき(北茨城、行方)
「初めて見たときは、『このでっかい半纏(はんてん)は、いったい何?』と、驚きました」。北茨城市に本部があるクリーニング会社「ながしまらぼ」の本多理江さん(43)が、笑いながら話した。
入社当初のこのエピソードから約15年がたち、今では新人たちにかいまきについて説明することもある。説明の文句はこんな感じだという。
「ご年配の人の中には、冬には欠かせないものという声も多いです。青基調と赤基調の2枚セットで持ち込まれることもあって、昔は嫁入り道具の1つだったとも聞きます。お預かりしたときは、そんなことを心に留めながら、作業しましょう」 ―。
かいまきは、古くからの寝具の1つだ。ふかふかとした手触りは布団だが、形と大きさは着物。腕を通せる“袖”があるが、実際に通したら、身動きがとれないことが想像できる。
寝るときは、着物の場合でいう前面を下にして、襟先から襟下の部分を開いて、体にかける。寝袋に近い感覚で全身が包まれることになり、寝相が悪い人でも体からずれにくい。袖は形だけのもので、実際に腕を通すことはないが、肩から首元を温かく包む。
最もよく使われているのは、寒さが厳しい東北地方だという。
ながしまらぼは、古くからかいまきのクリーニングを受注していて、今もサービスメニュー一覧に「かいまき」の文字がある。「地域に根ざした経営がモットー。地域に使う人がいる限りは取り扱わせていただく」と本多さん。
ただ、頻繁に依頼があったのは数十年前まで。今は、1店舗あたり年間数点という状況が続いているという。
今シリーズにふさわしい「現役ぶり」には、行方市の創業100年以上の店「大国屋」で出合えた。「うちは寝具をはじめ何でも扱うよろずやです」と同店の横瀬貴志さん(56)。
同店の奥には、素材、柄ともにさまざまなかいまきがずらり。福島県の職人に製作を依頼するという本格仕立てのかいまきは、高級感あふれるものだった。
ネット販売を始めてから、品ぞろえを増やしたという。「田舎の店だし、普通の商品では目に留めてもらえないでしょう」。本県や東北のほか、関西地方からも注文があり、贈答品にと追加注文する人も多い。「正直、人気に驚いた」と横瀬さん。
それから10年ほど。今は、かいまきへの思い入れも生まれ、夢もある。
「古くからの文化を継承することに役立てるのはうれしいもの。オリンピックを機に、世界に知られたら面白いね」