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瓶ならではの味わい
根強いファン多し
瓶入りの牛乳(水戸)
銭湯や温泉の名物と言えば、風呂上がりの牛乳やコーヒー牛乳。瓶を片手に、仁王立ちでグビっといくひとときは至福の時間だ。だが、普段の暮らしではどうだろう。スーパーに並んでいるのは紙パック入りばかり。学校給食も同じだという。瓶牛乳は、今も“現役”なのだろうか。調べてみた。
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訪ねたのは、水戸市笠原町の「いばらく乳業」。1959年創業(当時の社名は茨城雪印牛乳)の老舗乳業メーカーだ。
牛乳を製造販売している乳業メーカーは県内に5社あるが、瓶牛乳を作っているのは現在は同社のみという。「当社の場合、紙パックと瓶の割合は、紙パック(大型パックを除く)が8割で、瓶が2割。瓶牛乳は数を減らす一方で、『瓶牛乳でないと』という根強いファンが多い。今もしっかり現役ですよ」と、同社常務の大島均さん(56)。
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瓶牛乳の全盛時代は、学校給食の牛乳が瓶牛乳だったころ。県内では、給食の牛乳が瓶から紙パックに変わったのは1985年。県内の給食の牛乳の約4割を提供している同社も、以降、紙パックの牛乳の製造量が瓶牛乳を上回った。
現在、瓶牛乳は、宅配用と、銭湯や道の駅などの施設への卸し販売のみ。牛乳瓶は、空き瓶を回収後、きれいに洗浄し、再び中身を詰めて商品化する「リターナブル瓶」のため、販売は瓶の返却が可能な場所に限られるという。
宅配用には、専用のオリジナル品をそろえている。同社の一押しは、県産新鮮生乳100%使用の「地産地消 いばらき厳選牛乳」。ほかに、1本で1日分のカルシウムと鉄分がとれる乳飲料など、機能性に富む商品もそろう。「宅配歴30年以上という、長く愛してくださるお客さまも多い」と、同社営業課長の高木将樹さん(54)。
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紙パックやペットボトルなど、さまざまな容器が登場している現代、牛乳は瓶が健闘しているのはなぜなのか。
同社生産部長の高安謙さん(59)は、「瓶は飲み口が広いから、牛乳の香りも一緒に飲み込める。牛乳のおいしさをダイレクトに味わえると思います」と話す。瓶は機密性が高いため、作りたての新鮮な味を閉じ込められるのも利点だ。
水戸駅にあるミルクスタンド従業員の山本愛生さん(22)は、「中高年の特に男性が購入することが多い。瓶牛乳をみて、『懐かしいなあ』と、思わず笑顔になる人も」。郷愁も味わいの一つになっているようだ。